着物が虫食いされては大変だということで、着物をしまうタンスやたとう紙の中に防虫剤を入れている人は多いでしょう。
「そもそも防虫剤は必要なのか?」を着物のクリーニングをする職人から見て、防虫剤は基本的に必要ないことをお伝えします。
正絹の着物で虫食いされた着物をほとんど見たことがない
長年、私は着物のクリーニングを専門に扱ってきましたが、少なくとも私が今まで見てきた中で、正絹の着物で虫が食っていた物はほとんど見たことが無いですね。
ウールの着物は虫食いされる
ウールの着物だったらいくらでも虫食いされているのを見てきましたが、正絹の着物ではほとんど皆無に近いです。
同業者の間でも絹には虫食いはほとんど無いと言われる人がほとんどです。
正絹の着物は絶対に虫食いされないと言い切れるのか?
「絶対虫食いはない!」と断言していいかどうかは科学的に検証しないと問題があるでしょうが、私の経験の限り、そして同業者の間でも結構常識的に「虫食いはほとんどない」というのが共通見解です。
つまり確率論的に言えば「めったに無い」と言えると思います。
むしろ防虫剤でのトラブルの方をよく見て来ました。
虫食いと間違える生地の痛みによる小さな穴空き
虫食いによって生地に小さなが空きますが、生地が古くて傷んでしまっている場合、まるで虫食いされたかのように小さな穴が空いている着物の生地はいくつも見たことはあります。
ただし、金箔加工の金はゴキブリが好んで食べると聞きます。
防虫剤を使用する場合の注意点
どうしても防虫剤を使用されるのであれば、必ず守っていただきたいことがあります。
それは防虫剤を着物に直接のせたり、着物が納めてあるたとう紙(文庫紙)の上に直接置かず、タンスの引き出しの隅に1つ置く程度にしてほしいということです。
最近は見かけませんが、昔は防虫剤の形そのまま着物の色が変色していたり、あるいは色が抜けていたり、さらには着物全体の地色が変色してしまった着物がお手入れで持ち込まれたこともありました。
ただし、今は着物専用の防虫剤が売ってありますので、どうしても防虫剤を使いたい場合は上記のような使い方をする方が良いと思います。
当店の防虫剤の使用に関するアドバイス
当店では防虫剤は特にオススメしていません。
本来、着物(絹)は紬や黒物の着物以外は十分な精錬がされて作られているため、着物や帯として世に出ている絹には虫はほとんどつかないようです。
もちろん、「絶対」ではありません。
0%ではないとは思います。
そういった意味では、紬や黑物(留袖や喪服)の着物もまれに虫食いされる可能性があるので、防虫剤を1つタンスの角に置いておくと安心できると思います。
なぜまれに絹の着物の虫食いが起こるのか?
ウールでできている着物や羽織には虫がつきやすいので、ウールには防虫剤は必要です。
絹の着物がまれに虫食いが発生する原因は、ウールの着物と絹の着物を一緒に保管してしまうから影響があるのでは・・・と私は思っています。
着物には防虫剤より乾燥剤が必須
絹の着物や帯に防虫剤を使用して金箔に化学変化が生じたり、染めが変色したりした着物を過去に数多く見てきました。
全ての防虫剤でそのようなことになるわけではないでしょうし、現在はすでに防虫剤の改良が進んでいて大丈夫でしょうが、どうしても使いたいという場合は、一種類一つにして混用は避け、着物に直接のせたり、たとう紙の中に入れたり上にのせたりしないことです。
保管場所の隅に置くくらいが安全でしょう。
乾燥剤でカビを防ぐ方が大切
着物のしみ抜きやクリーニングをする側である私のオススメとしては、防虫剤よりも乾燥剤の方が大切ですので、そちらを着物を収納しているタンスなどに入れておかれた方がいいでしょう。
余計なリスクを背負うより、着物の収納トラブルで一番多い「カビ」とそのカビによる変色を防ぐためにも着物専用の乾燥剤を入れておくことが一番の収納対策ではないかと思います。
「着物は虫喰いされないの?防虫剤は必要なの?」のまとめ
・正絹の着物はほとんど虫食いされることはない(0%ではない)
・ウールの着物は虫食いされるので防虫剤は必要
・紬や留袖、喪服には防虫剤を使用しておいても良いかも
・防虫剤よりも乾燥剤の方が大事
・着物の大敵はカビによる変色が最も多く、乾燥剤の方が重要度が高い
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